アメリカのリーディング・メソッド

音楽ライター山本美芽が、アメリカ在住の5年間に学んだリーディングメソッドについて綴ります。

フルセンテンスで答える経験が文章力の核になる

元小学校の先生の私の家庭教師、ミセス・ギャラントと「うちの娘のリーディングをどうしたものか」と話していたときに、「フル・センテンスで答える練習が大事だ」という話になりました。

そのあとちょうど、日本語補修校の宿題をやっているときに、
「わけをたずねる文を答えを書きましょう」という問題があるじゃありませんか。

「あ、じゃあ、弟にきいてみようよ。好きな食べ物とか」
「何が好き?」
「何が好きだと、新幹線っていうかもしれないよね」
「じゃ、どんな食べ物が好き?」
「そうそう、それをもうちょっと作文っぽくちゃんとして書いてみたら」
といって書いたのが、

「すきな食べ物はなんですか。」

おーっと!! ミセス・ギャラントが、「フル・センテンスで答える練習の例文で、娘と練習してみるように教えてくれた英語の例文が、まさにそれ。

「あのね、おすしと、ぎょうざと、おでんと…」

「あのさー、英語できかれたときに、おでんっていわないほうがいいよ」

「なんで」

「おでんって何かアメリカ人は知らないじゃない。英語でおでんについて説明するの、お母さんはやだよ」

「おすしなら大丈夫なんじゃない」

「でもさ、おすしだと通じないかも、すしのほうがいいんじゃない」

「ふーん」

そこで、隣にいた2歳の息子に「食べ物は何が好き?」ときくと

「ぎゅうにゅう!!」

といって息子は答えました。

「ねえ、好きな食べ物は何ですかってきかれて、おすし、って答えるんだったら、2歳でもできるよねえ。小学校の2年生だったら、私が好きな食べ物はおすしだよ、とか言った方がいいかもね」

と、まあうっとうしいかもしれない話を娘にしておきました。

そこで自分の反省なんですが、日常生活で、会話で答えるときに、
「おすし」みたいな、単語だけでの受け答えがすごく増えてしまっているような気がしました。

会話だったらそれで問題ないんです。

でも、とっさに「私が好きなのはお寿司だね」とすらっと言えるほうがいい。

もし、その文章が浮かばないで、「お寿司」しか浮かばないと、文章を書いたり作文を書くときに、文章がぱっと頭に浮かばず、何を書いていいんだか、いちいちあーでもないこーでもないと頭をひねる必要が出てきて、悲惨なことになると思います。

これはまさに、日常会話をしながら、「お寿司」と子どもがいったら、「そう、あなたはお寿司が好きなのね」とか、なるべく長い文章にして返してあげるしかないような気が。

それは日本語でも、英語でも、まったく同じことをやっていかなきゃいけないのだな、と今日しみじみ意味がわかりました。

1年生の保護者面談のときに、娘の担任の先生が、「お宅のお嬢さんは、ふだん単語でばかり返事をしてきて、なかなかフルセンテンスで返事をしないから、できないのかと思って心配していたら、実はできることがこの前わかったの」といってすごくうれしそうにしていました。

娘に「どうしてフルセンテンスで答えないの」ときいたら「えー、長ったらしく文章を言うのが面倒なんだもん」といっていました。まあ、そりゃそうかも。それはわかる。でも、やっぱり、いつまでもそのままじゃいけないんですね。

日本語も、英語も、質問には、単語だけでぼんっと答えるのではなく、長ったらしく文章で答えるようにすると、国語力も作文の力も伸びるのだなと、痛感したのでした。

そして要するに、日本語でもフル・センテンスで日常的に答えていないものだから、英語でそんなことをやれといわれても、しんどいのは当たり前だなと。

まずは日本語からですね。

もちろん、日常会話はフルセンテンスにはなりえないのが現実ではあります。以下の記事を読むと英会話でも、フルセンテンスで長ったらしくいろいろ言っていては会話のスピードについていけない面も大いにあることが指摘されています。そりゃそうかも。

http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/2009/12/post_644.html

でも、やっぱり少しでもしゃべっているときに文章を長くしたほうがいいんじゃないか、という気がするんですよね。

「何の食べ物が好き?」と子どもにいわれて、

「お寿司」で終了してしまうのではなくて、

「そうねえ、お母さんは、やっぱりお寿司が好きだなあ。アメリカのお寿司も高いところはおいしいんだけれど、アメリカ人向けのなんちゃってなお寿司屋さんのお寿司はなんだかいまいちよね」

とか、なんとか会話を長く…。それで、子どもの話す文章が長くなるのかどうか、わかりませんが。

フルセンテンスでない文章をフルセンテンスにしましょうという英語の練習問題みたいなのも結構あるんですね。こういうのを生徒にやらせるのがミセス・ギャラントの大事な仕事でもあったのかなあ。

http://www.eigo-joho.com/J20322.html