アメリカのリーディング・メソッド

音楽ライター山本美芽が、アメリカ在住の5年間に学んだリーディングメソッドについて綴ります。

純粋に面白い本と、リーディングのために書かれた教材チックな本

いまのところ、新学期の2週目。まだ娘のリーディングの宿題は始まっていません。このすきになんとかみんなに少しでも追いつきたいというのが理想で、実際のところは、まあ、毎日1冊英語の本を読めればいいほうです。

ミセス・ギャラントが、うちの娘にといって貸してくれた「どろんこハリー」をきのうは読んだんですが、これが、超かわいい!!!!!!! 大人の私のほうが夢中になってしまいました。

Harry the Dirty Dog

Harry the Dirty Dog

ちょうど娘には難しすぎずやさしすぎず、新しい単語も何個か覚えられて、ぴったりの本です。

私も一緒に読んで、ARクイズの人間バージョンってつもりで、あれこれ質問してみました。

「ハリーは何色の犬だったのが、何色になっちゃったの?」
「白が黒になっちゃったの!!」

「ハリーは、お風呂が好きだったんだっけ?」
「きらいだったよ!」

「家族のみんなは、もう、この犬がハリーだって、わかったみたい?」
「気がついてない!!」

といった感じで、コンプリヘンションも楽しい!!!!

もう、真っ黒になるまで遊んでいるハリー、本当にかわいい!!!

あー楽しかった!!!!

そこでふと気がつきました。

でも、どうして、いつもこんなに楽しくないのかしら。

ひとつはリーディングレベルが難しすぎて合っていないと楽しくない。

もうひとつ。ハリーのこの本は、リーディング教材としてではなくて、純粋に作品として書かれたものだと思うんですよね。

娘が去年学校からもって帰って読まされていた薄っぺらいリーディングの本は、どう見ても、リーディングの教材のために、難しい言葉を使わないように気をつけながら、なんとかストーリーをつくりました、って感じの本ばっかりでした。

ああいう「教材」っぽいリーディングの本は、まるで、そう、ピアノの練習曲みたいです。

私が長年たずさわってきたピアノの世界も、リーディングの世界も、レパートリーの面では同じ課題があります。

ピアノの場合、素敵な曲はむずかしい。やさしい曲で素敵な曲が少ない。それは、少ない音でほんとうに素敵な曲をつくるのが、ものすごく難しいから。

その結果、需要が圧倒的に多い初心者向けの曲が不足している。仕方ないから、初心者向けに、少ない音でむりやり曲をつくる。練習曲もそうしたもののひとつでしょう。

子どもや初心者はそういう「曲としては、いまひとつつまらない」ものを練習するしかない。でもそれだと、練習していても、あんまりおもしろくない。だから練習が面倒になり、上達せず、やめてしまう。

リーディングの世界も、ほんとうに面白い本は難しいものに多いと思います。ピアノの世界よりも、初心者向けの面白い本はたくさん出ています。でも、毎日1冊という勢いで子どもが本を読まなくちゃいけないとしたら、うーむ、その量にこたえるだけの「面白い」本が、果たして存在するかどうか?

少なくとも家庭では、面白い本じゃないと楽しくないですから、1冊でも多く、やさしくて面白い本を探すというのが重大な課題になってきます。


やさしい言葉で本当に面白い本を書くのは、ものすごく困難なことだけれど、実はいちばん求められています。すぐれた児童書に贈られるコールデコット賞は、著者へのひとつのインセンティブになっているんでしょうね。


コールデコットメダルについてのウィキペディアの記事(英文)
http://en.wikipedia.org/wiki/Caldecott_Medal#Caldecott_Medal_recipients

コールデコット賞を出している団体 Association library service for children
http://www.ala.org/ala/mgrps/divs/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/aboutcaldecott/aboutcaldecott.cfm